その瞬間、俺は知らず知らずのうちに唇を噛み締めた。
齋藤先生のことを考えるあまりに、自分に隙が出来たことの事実。
もしも齋藤先生に怪我がなくて、手に持っているのが木刀ではなく真剣だったら、今頃俺は……。
情けない。
自分に腹が立つ。
俺は、自分で思うよりもずっと弱いんだ。
そんな俺が齋藤先生に勝ちたいなら、余所事を考えている暇はない。
本気でいこう。
怪我しているからと気を遣うことが、一番齋藤先生に対して失礼だ。
立ち向かう相手が誰であろうと、どんな状態であろうと、全力で勝負することが、相手にとっての礼儀なんだ。
たとえそれが、互いの生命をかけた勝負だったとしても。
相手に、礼儀を尽くせ。
「ーーいきます」
これで、決める。
俺は木刀を寝かせたまま、齋藤先生目掛けて走った。
ーービュッ
横一文に振られた齋藤先生の太刀を避けると、素早く背後に回り込む。
「ーーなっ⁉︎」
齋藤先生が慌てて振り向く頃には、俺はもう齋藤先生の喉元に木刀を当てていた。
「それまで。ーー勝者、古宮‼︎」
土方副長の手が、高々と挙げられた。



