再び強く地を蹴って、齋藤先生に挑む。
「ーーくっ」
齋藤先生は道場の連中みたく、一撃で倒せるほど弱くないことは、蘭丸との試合で十分承知している。
なら、連続攻撃しかない。
そして、防御してできる隙を、狙う。
ーーガッ
「……っ」
「ーー!」
何度目かの鍔迫り合いで、齋藤先生は微かに眉を寄せたのを、俺は見逃さなかった。
すかさずに齋藤先生を押し返して、構える。
齋藤先生は、地面に方膝を付けたまま、木刀の切っ先を俺に向けた。
心なしか、切っ先が震えている。
「……まさか」
蘭丸との試合で、怪我をしたのか……。
嘘だろ。今まで、そんな状態で俺と。
俺の木刀が僅かに下に下がる。
刹那、齋藤先生が、俺の懐目掛けて飛んだ。
「ーーぐっ」
しまった。
胴に当たった……でも、まだ浅い。
審判である土方副長も、俺たちを静観している。
「……いらん気を遣うな。全力でこい」
風に乗って、齋藤先生の言葉が耳に入る。
肩を上下して呼吸する齋藤先生は、俺の目を据えて微動だにしなかった。



