Closed memory


ーー

「勝負、着きましたね」



一つ息を吐いて、沖田先生は改めて二人を見た。


沖田先生は、何やら考えているのか心此処に在らずのような口ぶりだったけど、確かめることは出来なかった。


何故なら俺は、蘭丸の背中から目が離せなかったからだ。



「……はい」



勝ったのは、



「勝者、斎藤一!」



蘭丸ではなく、斎藤先生だった。
当然と言えば、当然の結果だろう。


だけど。


「……蘭丸、いい試合だったな」



俺が駆けつけた後、斎藤先生は蘭丸に向かって囁いた。


齋藤先生の表情は穏やかで、本当に蘭丸との試合を楽しんでいたんだと思わせられる。


蘭丸は何も言わず、青黒く腫れた胴を庇うようにして、一礼する。



「蘭丸……」



「……」



「いや、構わない。次は京だったな。準備出来次第、声をかけてくれ」



「あっ、はい」



齋藤先生は、手拭いで汗を拭いながら、土方副長達の輪に入っていく。



そして蘭丸は、齋藤先生が立ち去るまで、その顔をあげることも、言葉を発することもしなかった。