「ーー始め」
戦いの火蓋が今、土方副長によって切られた。
その刹那、鋭い払いが齋藤先生から放たれた。蘭丸の胴に襲いかかる。
「ーーっ‼︎」
蘭丸は何とかそれを避けると、態勢を整えるために間合いを開けた。
浅く呼吸しながら下段に構えていた木刀を中段に切り替えると、今度は蘭丸から仕掛けた。
「ーー」
誰かが、微かに息を飲むのが分かった。
此処にいる皆が、この二人の勝負に釘付けになっている。
「見かけによらず、いい度胸してますね……彼」
俺の横で、沖田先生が言った。
頷く。
「……まるで、舞を舞っているみたいでしょう。あれが、昔から蘭丸の戦い方なんです」
蘭丸はいつも相手の太刀筋を読むのではなく、相手の足を見て、次に相手がどう動くのかを予測しているらしい。
刀の間合いは一足一刀か二足一刀。
足の位置で次の攻撃の間合いが分かるのだと、以前蘭丸が言っていたのを思い出す。
「……なるほどね」
沖田先生は、蘭丸を見ながら面白そうに笑った。



