「あらら。いやに機嫌が悪いなぁ、今日の土方さんは……」
「待たされて怒ってんだろ、多分。あの人、気が短いからさ」
「ほんと、土方さんって見たまんまな性格ですよね〜」
「総司……平助……お前ら」
さっきよりも数段低くなった土方さんの声に、俺と蘭丸は同時に身震いした。
あんな地を這うようなドスの効いた声は、今まで聞いたことがない。
「おや、これ以上は止めといた方がいいようですね。土方さん弄りも腹八分目……そろそろ、入りましょうかねぇ」
沖田先生は、最後に俺たち二人に目を向けた後、静かに襖に手をかけた。
「ーー失礼します」
両先生の後に、俺たちが続く。
初めて入る土方副長の部屋は、どこよりも一段と空気が重く、身に突き刺さった。
いつの間にか、太ももの上に置いた拳に汗が滲む。



