ひまわり

「痛っ…。」

「ごめんね。しみるけど、もう少し我慢してね。」

にっこりと笑って、丁寧に傷の消毒をする先生。
痛いはずなのに・・・先生に触れられた手のひらに意識が集中して、痛みよりも先生の手の暖かさの方が私に伝わった。

消毒された手のひらはジュクジュクする。

「なんで大野先生が治療してるんすか?」

隣で見ていた遼くんが先生に聞く。
確かに・・・数学の先生が治療しているって変な感じ。

「アスレチックで無茶して怪我する生徒が多くてさ。怪我したバスケ部を連れてきたら、保健の先生に『手伝って』って捕まったんだよ。」

傷口にガーゼを当て、テープをつけながら答えた。

「消毒治療ぐらい俺でも出来るからな。…テープじゃ取れちゃいそうだね~。」

う~んと少し考えて、先生は包帯を取り出した。

「え!?そんなに大袈裟な傷じゃないですよ!?」

包帯を巻き出す先生に、私は驚いて言った。
だって、ただの擦り傷だもん!
テープで充分だよ!!

「でも、テープじゃ隙間が空いちゃうから…よし!出来た♪」

救急箱を片付けだす先生は満足した様子。
その姿と大袈裟に巻かれた包帯を見るて、私はけらけらと笑ってしまった。

「俺たちにもこんな大袈裟な処置する気っすか?」

笑う私の横で、遼くんは不安そうに問いかける。
先生はバスケ部の顧問だから、何かあった時は処置することがあるのかな?