ひまわり

「今のって…だれ?」

ポツリと呟く。
カーテンを閉め直してくれていた千沙ちゃんが教えてくれた。

「大野裕行先生。二組の副担で今日からこの高校に来たの。確か…25歳って言ってたかな?」

「今、先生が自己紹介してたじゃん。どうかしたの?」

愛実が不思議そうに尋ねた。
なんて言えばいいかわからず、私は黙ってうつむく。

「もしかして…先生に惚れちゃった!?ダメじゃん~結麻には夢の彼がいるんだから~!」

ケラケラと笑いながら、愛実が冗談を言う。
それにつられて千沙ちゃんもクスクス笑いながら、ポケットから手のひらサイズの鏡を取り出して見せてくれる。

「もう~愛実ちゃんはすぐにからかうんだから!…結麻ちゃん、髪の毛ぐちゃぐちゃだよ~?帰る前に直した方が良いかも!」

差し出された鏡に写った私は・・・横になっていたせいで、髪の毛がぐちゃぐちゃになっていた。
二つに結わかれた髪の高さが左右で違い、つむじの方にかけて髪が持ち上がってしまっている。
髪ゴムから逃げ出している髪もチラホラ見えた。

「やだっ!ぐちゃぐちゃ~…この髪でさっき彼と話してたの!?!?」

恥ずかしさで頬から耳にかけて、カァっと赤くなるのを感じた。
そんな私の様子を二人が驚いたような表情で見つめている。

「………本当に惚れちゃったの…??」

問いかけるように呟いたのがどっちだったのかわからない。
でも二人して同じ顔で私を見ているから・・・自分で信じられないことを話しておこうと思った。

「…実はね……。」

他の誰にも聞こえないように、小さな声で話した。

「「え~!!!!」」

愛実と千沙ちゃんの驚きの叫び声が保健室に響き渡った。