ひまわり

「一人だけ挨拶出来てないし、ちょっと心配で様子見に来たんだけど、永峰さん大丈夫そう?」

ドクンッ
聞こえてきた声に心が反応する。
この声って・・・

「その声は大野先生?もう起きてるから大丈夫ですよ~!」

愛実が大きな声でカーテン越しに返事を返す。
すると「入って大丈夫?」と顔を合わせている千沙ちゃんに遠慮がちに問いかけた。

千沙ちゃんは振り向いて、私の反応を伺う。
『良いよ』の意味で、こくりと頷いて見せた。

シャッと少しだけ開いたカーテン。
その向こうには、さっきまで壇上で挨拶していた先生が立っていた。

「休んでいるところごめんね。さっきも挨拶したけど大野裕行です。二年二組の副担任になりました。一応、担当クラスの子なんで挨拶に…具合は大丈夫そう?」

緊張した面持ちで挨拶をされる。
その姿を見つめることに精一杯で、先生の言葉が耳に入らない。

私から返事がないことで、先生がオロオロとした様子になった。

「ちょっと…結麻…。」

横にいた愛実に腕をコツンとつつかれ、ハッと我に返る。

「あっ…!…えっ…と…。だいじょう…ぶ…です…。」

たどたどしく返事をした。
私から返事がきたことで、困ったような先生の顔が、パッと明るい笑顔になった。

「そっか!良かった。じゃあ明日から副担任としてよろしくね。」
「…はい。よろしくお願いします。」

にっこりと笑って「じゃあ気をつけて帰ってね」と言い残して、先生は保健室から出ていってしまった。