ひまわり

なんで・・・【彼】が・・・ここにいるの・・・?

目を大きく開いたまま、私はその人を見つめた。
右の先生から順番に挨拶をしているが、その声は私の耳に入らない。

「…若いけど、国枝先生のがカッコイイかなぁ。ねぇ結麻ちゃん?」

千沙ちゃんがする質問も届いては来ない。
呼吸が浅く早くなる。
ドキンドキンと大きくなる胸の鼓動。

「結麻ちゃん…?どうかした?」

返事をせずに一点を見つめて固まる私に千沙ちゃんは気づいた。

千沙ちゃんから声を掛けられた時、挨拶の順番が彼に回ってきた。
隣の先生からマイクを受け取り、深呼吸してから話し出す。


「数学担当の大野裕行(おおのひろゆき)です。」


その声を聞いた瞬間、私の体に衝撃が走った。
ズキンッ!と激しい頭痛と共に・・・私の意識が遠くなる。

「え!?結麻!?」
「結麻ちゃん!?」

薄れゆく意識の中、愛実と千沙ちゃんが私を呼ぶ声が遠くに聞こえた───





あぁ・・・
ずっと聞きたかったあなたの声

想像よりも少し高くて、それでも男の人の声で、優しかった・・・