ひまわり

───ギシッ
少し動くだけできしむベッド。
遼くんに運ばれて、私は無事に救護室へと着くことが出来た。
今は保健室の様なベッドに横になっている。

遼くんがお姫様抱っこ状態で運んでくれていると気づいた時、カァァと顔が赤くなり、周りの人たちの視線がとても恥ずかしかった。

「落ち着くまで、ここで休んでて良いってよ。」

私をベッドに寝かせてくれた後、スタッフの人とのやり取りを全部、遼くんがしてくれた。
今はベッドの横のパイプ椅子に座っている。

「うん…。遼くん、ありがとう。」

遼くんは優しく微笑んでくれる。

「どういたしまして。帰りも送っていくからさ、ゆっくり休みなよ。」

本当に遼くんは優しいなぁー・・・
この優しさがすごく心地いい。

静かな部屋の中。
ザワザワとした雑踏の音が遠くに聞こえる気がした。
さっきまであの音の中にいたはずなのに・・・なんだかすごい時間が経った気分になる。

「…聞いてもいい?」

静かだった部屋に突然響いた遼くんの声。
「なに?」と私が返事をすると、聞きづらそうに口を開いた。

「さっきさ…伸也と何があったの?」

声の感じや雰囲気で、興味本意で聞かれているんじゃないのがわかる。
遼くんは私のことが心配で聞いてくれているんだ。

「…何かがあったわけじゃないよ。私が森くんを覚えてなかったのがいけないの。」

「知り合いだったの…?」

「そう…みたい…。でも、私は覚えてないんだ。」

「覚えてないのは仕方ないよ。永峰は悪くないよ!」

私の味方をしてくれる遼くん。
けれど・・・私はただ森くんを忘れているわけじゃない。
【全部】覚えてないんだ。

「…遼くん。私の昔話聞いてくれる?」

───素直に話そう私の過去のこと