ひまわり

「…お客様?いかがなさいましたか?」

私たちの雰囲気を心配してくれたのか、遊園地のスタッフの人が声を掛けてくれた。
私は荒くなる呼吸を抑えようと、胸に手を当て、襟元をギュッと掴む。

「あ…。ちょっとこの子が具合悪いみたいで。救護室とかありますか?」

愛実が冷静に対応。
スタッフの人は無線のようなもので、どこかに連絡をする。
そのやり取りを見ている時、千沙ちゃんが優しく肩を支えてくれていた。

「ご案内いたします。歩けますか?よろしければ車イスをお持ちしますが…。」

「…大丈夫です。歩けます。」

小さな声で答えて立ち上がろうとしたが、足に力が入らなかった。
・・・恥ずかしいけど、車イスしかないかなぁ
なんて思った時だった。
フワッと体が軽くなった。

「俺が連れて行きます。案内してください。」

遼くんが抱き上げてくれたのだった。
突然のことに何が起きているのかわからなくなる。

「私も行く!」

「俺が連れて行く!!」

千沙ちゃんと森くんの声がした。
でも・・・せっかくの遊園地。
みんなで私の付き添いをさせるわけにはいかない。

「愛実…。」

「なに?」

「…休んで落ち着いたら私は帰るから、愛実たちはこのまま遊んでて?」

私のこの状態がなぜなのか、きっと愛実はわかっているから、愛実にお願いをする。

「わかった。大丈夫なんだよね?」

愛実の言葉にコクリと頷く。
あと一つ・・・大切なお願いをする。

「森くんに…私の記憶のこと話してもらえる?千沙ちゃん達にも話して欲しい。本当は自分で話すべきなんだけど…この状態じゃ無理だし、早く誤解を解いときたいから。」

愛実は少し驚いたような顔をしたけど、私の気持ちを理解してくれたのか、優しく笑ってくれる。

「わかった。話しておくから安心して休んで。…じゃあ泉谷、結麻のことよろしくね。」

「あぁ。了解。じゃあ案内してください。」

その言葉の後、すぐに遼くんは歩き出した。
少しずつ今までいた場所が遠くなっていく。
それと同時に私の心が落ち着いていくような感じがした。