ひまわり

30分ほど並んで、乗り場に到着する。

「あっ!俺らが先に乗っても良い?」

私の隣にいた森くんが言う。
先を歩いていた4人は快く一番を譲ってくれた。

なのでグループで一番始めに乗り物に乗り込む。
乗り物が動きだし、暗闇を進みだした。
ひんやりとした雰囲気と静かに怖さを盛り上げる音楽に、私は身震いをした。

「永峰さん大丈夫?怖いのダメだった?」

ガチガチに固まり、カタカタと震える私に森くんが気がついた。
心配そうに声をかけられる。

「…大丈夫。見ないようにするから。」

なんて言った瞬間に、目の前に飛び出す生首。
「きゃー!」と叫んでしまった・・・
もうやだぁ~・・・

「怖くないようにさ、話でもしてない?」

「え?」

森くんの方に顔を向けると、優しい笑顔で私の方を見ていた。
・・・静かに乗っていて耐えるより、話していた方が怖くないかも・・・

「うん…。」

こくりと頷く私。
すると森くんが話をしてくれる。

春休みに入ってからの部活のことや自分の中学の頃のこと。
地元がどことか、出身中学がどこなのかを教えてくれた。
私はたまに相づちを打ちながら聞いていた。

お化け屋敷も、もうすぐ終わりかな?なんて思った時だった。

「永峰さんさ…本当に俺のこと高校まで知らなかった?」

森くんからの唐突な質問。
少し考えてから、返事をする。

「…うん。知らないと思うけど…なんで?」

「俺さ、中学入学と同時に引っ越したから、颯人と同じK区の中学なんだけど、小学校はS区なんだよね。」

「…S区?」

S区・・・それは私が小4まで住んでいた場所。
私も小5の頃、今の地元E区へと引っ越していた。

「そこで永峰さんと同じクラスだったんだよ。覚えてない?」

驚くようなことを森くんが言った時、ちょうどお化け屋敷の終わりに到着した。
スタッフの人に促されるまま、私たちは乗り物を降りて外へと出る。
ずっと暗い中にいたから、日差しがとても眩しく感じ、私は目を細めた。

ぐいっ
突然、腕を引っ張られる。
森くんが私の腕を掴んだまま、人混みの中へと歩きだした。

「ちょっ…森くん!どこ行くの!?」

私の言葉を無視して、無言で歩き続ける森くん。
軽く抵抗してみたが、しっかりと掴まれた腕を私の力で離すことは出来なかった。