<side 皐月>


休み明けで途切れることのない外来患者に昼時はとうに過ぎ、今の今まで長引いてしまった。
へとへとになって、食堂へ向かうとそこには高城先生がいた。
先生はちょうどOPEを終えてきたところだったようだ。

休み明けの外来なんて、なんて外れくじなんて思ったけど……。
ラッキー、こんなところで高城先生と2人きりになれるなんて。

先生の横に座ると、きつねうどんをいつもより静かにすする。


「そうそう昨日大変だったんだよ、桐山君がさ、目真っ赤にした女の子と一緒に外来に来てさ」

その言葉に、つい最近まで家に泊めていた未結ちゃんを思い浮かべる。
なんだ、またあの男に殴られたのか。まったく宗佑は何をやっているんだ。

「また女の子頭殴られたんですか?」

「え?違う違う、患者は桐山君だよ。背中の火傷と打撲でね。なんでも鍋をひっくり返したそうだよ。桐山君でもそんな失敗するんだね。もう女の子がおいおい泣くから大変だったよ」

「……そうですか」


鍋をひっくり返して、火傷と打撲……?
修羅場か何かかしら。

宗佑が怪我をしたっていうのにも関わらず、思わず顔が綻んでしまう。
何かしら発展があったのだろう。


「何、ニヤニヤしちゃってどうしたの?」

「い、いえ、何か修羅場かなーなんて。宗佑がそんなドジするとは思えないし」


あれ、でもちょっと待って、そしたらあのMRの可愛い子ちゃんはどうなったの……?
そういえば、最近病院であの子を見かけなくなった。
担当変わったのかしら……?

まさか、失恋のショックで仕事に来れなくなったとか。
いやぁ、さすがにいい大人がそんなことしないわよね。