家に帰ると、引き出しの中へひっそり閉まっている、昔の思い出の写真達を眺める。

その中に中学時代、一枚だけ隠し撮りしたそうちゃんの写真があった。


卒業式、これで本当に最後と意を決して隠し撮りしたのだ。

幼馴染だったのに、その頃、もう一緒に写真を撮ろうとは言えない関係になっていた。


私のカメラに気付きもしない写真の中のそうちゃんに、問いかける。


……ねぇ、この頃もう少し勇気を出してたら、私とそうちゃんとの関係は変わっていた?


そんな後悔は、もう死ぬほどした。

そう、そうちゃんと初めて別々の道を進んだ高校時代。

進まなきゃ……、いつまでもそうちゃんを想っていても仕方がない。


そう思って私は無理矢理、彼氏を作った。

今度はこうちゃんのようにはならないように。

もう人を傷つけるのも、傷つくのも嫌だ。

今度こそちゃんと恋愛するんだ。


そう意気込んでも、未練がましくひきずる私には到底上手くいきっこなかった。


だけど、そんな私を受け入れてくれる人がたった1人だけいた。

全て知って私の複雑な気持ちを理解した上で、それでもそっと私を包み込んでくれるような大人の人。


年は私の3つ上で、短大時代知り合った人。

私はその人と来月結婚する。

幸せになれる、そう信じていた。


彼と付き合ってから、私はそうちゃんとの思い出を振り返ると心がずきずきと痛むようになった。

その原因はきっと、彼への罪悪感。

その罪に苛まされるうちに、そうちゃんを思い返すことは少なくなった。


それが、まさか今になって、またそうちゃんと再会することになろうとは。

昔封印したはずの苦い思い出が一気に蘇る。



……大丈夫、もう過去は振り返らない。

そうちゃんの写真を見つめ、またそっと箱の中に戻した。


私はもう決めたのだ。

彼と幸せになるのだ、と。