そんなことを思い返していたら、唐突に処置室の扉が乱暴に開いた。
そこにはそうちゃんの姿。
急いで来たのか息をきらしている。
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
私にそう聞くとお構いなく髪の毛を掻き分け傷を確認しようとするが、あいにくもう処置後。
傷はガーゼで覆われている。
「何針縫ったんだ?」
そう女医さんに聞く。
「8針位だったかな。大丈夫傷自体はそんなに深くはなかったから」
それを聞くと、すぐさまパソコンの画像を食い入るように見始めた。
「これ、この前のCTでしょ?今回のと比べてうっすらここら辺に貯まってきてるのよ」
「……あぁ」
そう低い声で返事をしたそうちゃんの目に陰りが見えた。
一瞬部屋に緊張感が漂う。
そうちゃんが怒っているのは誰が見ても一目瞭然。
普段温厚なだけに、同僚の女医さんも看護師さんもそんなそうちゃんの姿には何も言葉を発せなくなっていた。
今にでも部屋を飛び出して行って彼に殴りかかるんじゃないか、そんな張り詰めた空気の中私はそうちゃんの腕にしがみついた。
「そうちゃん、彼は悪くないの。お願い、責めないで……っ」
「……藤沢」
そうちゃんが女医さんの名前を呼ぶと、女医さんはそうちゃんから私を離し、宥めようと背中に手を回す。
「そうちゃん」
処置室を出て行こうとする彼の背中に呼びかけた。だけど私の声には反応してくれない。
ただならぬ不穏な雰囲気に、女医さんも心配になって声をかけた。
「ねぇ、呼んどいてなんだけど、まさか喧嘩しないでよ」
「わかってるよ、まぁ相手の出方次第だけど」


