1%のキセキ






「……なんか、私の頭が悪くなってた方が良かったみたいだね」


たまらず出てしまった心にもない言葉。

その途端、持っていたフライパンが乱暴に置かれて、びくっとする。

今まで怖い位冷淡だったのに、その私の言葉を聞いた途端珍しく怒鳴った。


「な訳ないだろっ。人の気も知らないで、どれだけ心配したと思ってるんだ」

「……っ」


その迫力に驚いた私は思わず身を竦ませる。


「最悪、手足が動かなくなったり、喋れなくなったりするんだぞ。手術をすれば大方治るけど、悪化したら後遺症が残らないとは言い切れない」


睨まれながら説教され、バツが悪いようにそっと下方へ視線を外した。


「それに手術となれば、髪の毛を沿って直接頭に穴を開けるんだ。いやだろ、嫁入り前でせっかく伸ばしてた髪を剃られるの。後ろ向きに考えろとは言わない、でも、もっと心構えみたいなのものがあっても良かったんじゃないか」




私が頭を打った後、今と同じようにそうちゃんに説明されたことがあった。

自分に起きてる話だとはまるで思えなくて、不安になった。

そんな私の感情を読み取ったのか、それ以降そうちゃんがその手の話をすることはなくなった。


じゃあ私は、どうしたら良かったの……?

そうちゃんは、私がいつまでも思いつめていた方が良かったの?

でも、そしたらそうちゃん心配するじゃない。


……ねぇ、どう振る舞えば良かったの?

私は、何事もなかったかのように笑わなくて良かったの?









あれから、私達はリビングで向かい合ってご飯を食べていた。

冷たい張り詰めた空気の中、お互いほとんど会話を交わさなかった。


作ってくれたレバニラは、ニラの苦みとレバーのあの独特な味がするはずだったのに。

本来ならば食べられないと言っていたところなのに。


そんなレバニラを不味いとも美味しいとも感じなかった。

ただ無心で、箸で食べ物を掴んでそれを口に入れるという行為を繰り返した。

最後の一口を口の中に放り込んだところで、先にそうちゃんが席を立った。