そんなに夜勤疲れたのかな?
それとも、もしかして……
「……そうちゃん、怒ってる?」
「別に」
別にって……!
それ、めちゃくちゃ怒ってるの代名詞でしょ。
こ、これは、やっぱり怒ってるっ?
吐き捨てるように言われ、疑惑が確信めいてくる。
口の中は甘いのに、雰囲気はそれとは程遠い。
せっかくバレンタインのチョコ渡そうと思っていたのに。
でも、私怒られるようなことしたっけ……?
昨日無理なダイエットをして倒れたこと?
確かに迷惑をかけたけど、それだったらはっきり言ってくれないと謝りようもない。
……これじゃ仲直りの糸口さえつかめない。
「そうちゃん、昨日バレンタインだったでしょ?冷蔵庫に入れてるからあとで食べてね」
なるべく普段通り振る舞おうと、そうちゃんの異変に気付かないフリをしながら話かけた。
しかし返答はない。
……これ位でくじけてたまるか。
なんのこれしきと話を続ける。
「ちゃんとそうちゃんが食べれるように、ビターチョコで作ったからね」
一貫として彼からの反応はない。
これには私もまいって、
「……ねぇ、そうちゃん怒ってるなら言ってよ。私バカだから言ってくれないと分かんない」
と、いつもより低めの声で尋ねた。
「……随分、気楽なもんだと思って、昨日の今日なのに」
「え、貧血のこと?それなら大丈夫だよ。ダイエットも中止してるし」
そう言って見せつけるようにチョコを口の中に入れる。
「そうじゃなくて、頭の方だよ」
「頭だって、何ともなかったんでしょ?もう、結果的に何ともなかったんだから良かったじゃん」
「……そうだな」
ちらっと私の方を見るが、その視線はすぐにそらされてしまう。


