1%のキセキ




……いや、わざわざ夜勤明けに買ってきてくれたのだ。
その好意を無下にすることなんてできない。

苦手とは悟られずに、自然においしそうに食べてみせようじゃないか。


静かに覚悟したところで、ふと紙袋が目に入った。

中を覗くと、市販のチョコがこんもり。中には手作りらしきチョコもある。


わーい、どうせそうちゃん食べないんだろうから少しもらっちゃおうっと。
わくわくしながら、紙袋の中に手を突っ込み市販のチョコを一つ取り出した。

赤い包装紙を破いて中身を取り出す。

お、生チョコじゃん。
浮かれながら、一つ口の中に放り込んだ。

うーん……っ、おいしい。
これぞ、幸せな瞬間。

口いっぱいにチョコを頬張っていると、私の物音で起きたのか寝室から部屋着姿のそうちゃんがやって来た。



「あ、寝てていいよ。ご飯作ったら冷蔵庫に入れておくから」

「……いいよ、今日は俺が作る」

そう言ってキッチンに参入してくる。
冷蔵庫から取り出してきたのはやっぱりレバーとニラ。

そうちゃんの様子を傍目で見ながら、生チョコをぱくぱく食べる私。

立ちはだかる試練を前に、今のうちにお口で幸せを感じておこう。


「……そうちゃん、もしかしてレバニラ作るの?」

最終確認のようにそう尋ねる。


「あぁ」

「そうちゃん、私の苦手な食べ物知ってる?」

「しいたけとレバーとニラ」


なんだ知ってるんじゃんって、何の嫌がらせですかっていつもだったら突っ込みを入れたいところ。

だけど寸前でその言葉を飲み込んだ。

おかしい、何かがおかしい。

寝起きはいつも静かだけど、それ以上に今日は何だか怖い位に淡々としている。

いつもだったら、そんなにご飯前にチョコ食べてたら飯食えないだろ、位言いそうなのに。