ピピピッ
そんな中、そうちゃんの白衣のポケットが鳴った。
そこから取り出したのはPHS。
「はい、はい、ありがとうございます」
そう言って電話を切ると、すぐパソコンに向かってマウスをかちかちっと動かした。
そこに出たのは、検査項目と数字が羅列された採血データらしきもの。
「……貧血だな。過剰なダイエットと生理が重なったのが原因だろ。元々血圧も低いもんな」
私の顔を見ながら心底呆れたかのように、はーっと特大のため息をつく。
ダイエットを止めて肉を食えと散々言われた後、そうちゃんに見送られて病院を出た。
その後、夜勤当直だったそうちゃん。
翌日、私が仕事から帰って来た夕方、彼はまだ寝ていた。
起こさないように、こっそりいつものように料理を作り始める。
……まだ呆れてるかな、起きたらまた説教されたりして。
スーパーの袋から食材を出し終えて、冷蔵庫を覗く。
そこには、珍しく食材が入っていた。
もしかして夜勤明けで買ってきてくれていたのかな?
一言メールくれてもいいのに。
セロハンに包まれた、緑色の細長い特徴的な葉。
スーパーの野菜コーナーで普段目にしているんだろうけれど、なるべく認識しないようにしているせいか、久しぶりにその姿をちゃんと見た気がする。
そう私の苦手なニラだ。
そしてもう一つはなまめかしい、何かの内臓を思わせるような赤黒い物体。
表示されている名称を見て、そのまま冷蔵庫へ戻した。
これも私の苦手なレバーだ。
どっちも小さな頃から苦手としているもの。
まさかレバニラを作るつもりだったんじゃ……。
貧血気味な私に鉄分を取らせようという彼の優しさなのに、思わずさぁっと青ざめてしまう。
昔、給食に出る度、そうちゃんの皿にうつしていた。
しいたけを覚えていたなら、それ以上に毛嫌いしていたレバニラも覚えていてくれていても良さそうだけど。


