1%のキセキ






……最低1年って長くないか。

てっきり、トントン拍子に結婚まで進んでいくと思ったら。

もしかして同棲して妻としての力量を見ようとしているんじゃ……っ


家で、ジャカジャカと生クリームをかき混ぜながら悶々と考える。

そうちゃんが帰った後、バレンタイン用のガトーショコラを作っていたのだ。

ちゃんと甘くないようにビターチョコを使って。

本来ならば喜んでくれる彼を想像しながら作りたいところなのに、どうしても考えてしまうのはさっきのそうちゃんの言葉。

真結のつまみ食いからもガードしつつ、そんなモヤモヤと奮闘の末、出来上がったガトーショコラ。

あらかじめ買っておいた淡いピンク色のケーキケースに入れ、準備は万端。

ケーキに合うティーバッグも準備し、日付が変わって少し経った頃床に就いた。






「西川さん、これ出してもらってもいい?」

「はーい」


職場の和菓子屋さん。

私はここで抹茶色の三角巾と同じ色のエプロンを付け、販売員として働いていた。
ごたごたがあって何度か休んで迷惑をかけてしまったけど、今も同じ職場で働かせてもらっていた。
まぁ、婚約破棄、結婚式中止っていう込み入った事情に同情されたのか、皆快く迎えてくれた。

いつものようにしゃがんでショーケースに羊羹を並べていく。
すると、1人のお客さんに話しかけられた。


「すいません」

「はい」

返事をして、にこっと笑って立ち上がった瞬間、ふらっと視界が大きく揺らぐ。

女性の悲鳴が聞こえたのが最後で、頭が真っ白になりその場に倒れこんだ。