「反対するつもりは全くないよ。だけどあんなことがあったばかりで、ちょっと私達には衝撃的なことだったからね……。もちろん助けてくれた宗祐君は信じているけれど」
あれだけ信用していた婚約者に最悪な形で裏切られたんだ。
いくら昔から顔なじみの俺が相手だと言っても躊躇うのは無理もない。
しかし、思えば、一番の被害者である未結が一番立ち直りが早くけろっとしていた。
両親が卒倒しそうな頭の生々しい傷も、「ねぇ、そうちゃんこんな早くくっついちゃうんだね、人間てすごいね」って興奮してた位だ。
そんな楽観的な彼女が心配で、ちょっとの異変があればすぐに相談するように言って聞かせていた。
「心配されるのはごもっともだと思います。なので、すぐに結婚するつもりはありません。最低でも1年は、2人で生活してから籍を入れさせてもらおうと考えています。その間、頻繁に未結とこちらに顔を出すようにしますので」
「えっ!?」
驚嘆のあまり大きな声をあげる未結。
結婚を前提にとは言っていたが、しばらく時間を置こうとは以前から思っていたことだった。
唖然とする未結が可哀想になったのか、未結のお父さんがにこやかに言った。
「結婚の時期は2人に任せるよ。交際も結婚も、相手が宗祐君だったら何も文句はないからね。むしろこんな娘でいいのか心配な位だ」
「本当よねー。何かあったらすぐに相談してね、宗祐君」
うんうんと相槌を打ちながら言う佐智子さんに、横から母さんが口を挟んだ。
「もう2人とも何言ってるんですか、未結ちゃんがお嫁さんなんて嬉しいわー」
そんな母さんの言葉に、はにかんだような笑顔で応える未結。


