「あれ、侑吾君?」


ばったり会ったのは、この地元に住む理津子の父親だった。
もう70代に差し掛かったところだろうか、そういえば最後に会ってから1年以上経っているかもしれない。


「お久しぶりです」

「良かった、以前より元気そうだな」

私の姿を見るなり、安心したように微笑むお義父さん。

この人には、今まで本当に情けない姿を見せてきたからな。


「はい、おかげさまで」

「新しい彼女のおかげかな?」


そう言って、にやっと笑われる。

まぁ、いずれは紹介するんだ、この機会に話しておこう。


「あの、ちゃんとご報告しようかとは思っていたんですけど……」

「知ってるよ、藤沢さんだろ?随分若くて綺麗な子つかまえたじゃないか」

「え?」


知る由もないお義父さんから、藤沢の名前が出てきてびっくりする。


「一度ここで会ったんだ」

「ここでですか?」

「そう、ここで初めて会った時彼女は頭を深く下げていたよ」


……1人で来てたのか。
何で私に言わないんだろう。


「そして、私に気付くととても申し訳なさそうな顔をしてね。会釈して立ち去ろうとしたんだけど。どうしても気になってね、呼び止めて理由を聞いたんだ」

「彼女はなんて……?」

「君を好きになってしまったことと、理津子に代わって君の世話をさせて欲しいと伝えに来たと言っていた。彼女は、私の顔もまともに見れずに泣きそうな顔で言っていたよ。むしろ私の方は嬉しかったんだけどね、君にそんな相手がいたことが」




藤沢は、私の家へ来るといつも明るく強引に人の世話を焼いていた。

そんな彼女の行動に迷いなど微塵も感じられなかった。


だけど、本当は心の片隅で理津子に対して申し訳ないと思っていたのか。

それを、私に気付かせまいと気丈に振る舞っていたのだろうか。


いくら、理津子が私の幸せを願っていてくれているだろうと思っていても、それは、ただの想像でしかないのだ。
もう、確かめる術が何一つないのだ。


それでもそう信じて突き進むしかない、もしかして彼女はそんな複雑な思いを抱えていたのかもしれない。

明るい屈託のない笑顔にそんな思いを必死に隠して。