「絶対寝てると思ったのに」
そうちゃんが浴室から出てきて、一緒に大きなダブルベッドに入る。
「な、なんで、そんなに寝てると思うかな」
「昔からよく食ってよく寝てたじゃん。佐智子さんも、この子寝付きだけは良くてって自慢してたし」
「あぁ、それ位しか褒めることなかったんでしょうね」
「俺なんか幼稚園のお昼寝時間なんて寝れた記憶ないのに、いっつも未結はすぐ爆睡してたよな。林間学校の時も。神経図太いっていうか」
……いくら神経図太くてどこでも寝られようが、この状況で寝られる女子なんぞいないわっ。
「ね、眠くなるわけないじゃん。隣で寝てるだけでも、めっちゃ緊張してるのに
。誰かさんは余裕なんでしょうけどねっ、こっちはもう胸が張り裂けそうな位……、
「余裕なんてある訳ないだろ」
そう言って私の手を、自分の胸に置いた。
「分かる?俺の心臓の鼓動」
「……すごい、ドキドキしてる。なんで?」
「なんでって好きだからに決まってるだろ」
互いにベッドの上で向き合う。
「ねぇそうちゃん、さっきの続きは……?」
はにかみながらそう聞くと、そうちゃんの穏やかな目ががらりと変わる。
「……お前、煽ったんだから、さっきみたいに途中で中断とかなしな」
「て、手止めたのはそうちゃんじゃん」
「お前の腹が笑わせたせいだろ」
「それ位我慢してよっ」
あぁ、だめだ。ここまできて、こんなしょうもないことで喧嘩してる場合じゃない。
どうしたら甘い雰囲気になるの。
「できる訳ないだろ、お前こそ我慢しろよ」
「それこそ、できる訳ないでしょ!生理現象なのに、そうちゃんお医者さんなのになんてこと……っ」
きゃんきゃん吠える私の唇を塞ぐようにそうちゃんの唇が重なった。
不意打ちのキスに顔がかぁっとあつくなる。
「……分かったよ、今度は止めない。後悔しないな」
「し、しないよ」
それを聞いたそうちゃんがまた軽く口づけをした。
すぐに離れて、彼の微笑みが見え私も笑う。さっきまでの言い争いが嘘のよう、キス一つで仲直りできるなんて。
想いが通じ合って二度目のキス。
どことなく、こそばゆくて照れる。
もう少しで30近い年齢なのに。
初めてのキスでもあるまいし、唇が少し触れ合っただけでドキドキが止まらない。


