1%のキセキ





「特に何もないよ、高校から大学卒業して、研修医になってからもずっと勉強ばっかだったから」

「浮いた話ないの?」


コイバナに持っていきたい私に、怪訝そうな顔をされる。


「何?そんな話聞きたいの?」

「だって、彼女とかいないはずないでしょ?」

「彼女はいたけど、あまり思い入れないな。どの子も長く続かなかったし」

「なんで?」

「忙しくてさあまり連絡取れなかったし、彼女より実習優先してたから」

「そっか、さぞかし綺麗な子達ばかりだったんでしょうね」


自分の外見に自信があるような。

ちょっと嫉妬して嫌な言い方をしてしまう。


「そうだな」

そんな私の言い回しにも、正直に応えるそうちゃん。


「そんな子はいくらお腹がすこうが、絶対にこんな時間にミックスサンドなんて食べないだろうね」


……あー、可愛くないな。
なんでこんな言い方しかできないんだろう。

パンを食べる喉がやけにつっかえて、一度手からパンを離してワインで一気に流した。


「あはは、そうだな」

そんな私の様子にそうちゃんは、笑う。


「俺は、こんな夜中に食べるか迷いに迷って結局食べちゃう子の方が好きだけど」

「よく、分からないそれ」

「人間らしくて素直な子の方が可愛いってことだよ。未結はさ、いつも意地張るんだけど最後は素直になるじゃん」

「そ、そうかな。てかさっきのはそうちゃんがそう仕向けたんじゃん」

「あぁ、だって分かりやすい程食べたそうにしてるから。それに俺、未結がご飯食べてる時の顔が1番好きだし」

「え、なんで?」

「美味しそうに食べるから。特に肉料理と甘いもの食べてる時な」


……そんなところが好きなのか。

食べるのは得意だから、そんなのいくらでも見せられる。

しかし、そんな美味しそうに食べてたかな。食べるのは好きだけど、全然自覚ないや。

その後、そうちゃんもシャワーを浴びに浴室へ。

私は椅子に座ったまま、緊張を紛らわすように外の夜景を眺めていた。