そんな中見つけたのが彼だったのに。

勝手に罪悪感を感じているようで、素直に私の誘いに乗ってくれる。

私に好意を抱かない珍しい異性。

それが心地よくて今まで関係を続けてきたのに………。


一人の女にずっと片思い、なんて。

それが私に対して「無」だった理由なのね。


そう思うと、今まで感じたことのないような感情が芽生えた。


「大丈夫か?」

「……うん」

「酔った?」


……どうしよう、酔ったふりでもして彼につけこもうか。

男なんて簡単だ。

少し笑って、甘いセリフを言えば私の言うことを聞いてくれる。


そう、病院の先生達のように……。


うっと、胃から込み上がるものを感じて、ひたすら耐えた。

そして自然にふるまって、トイレへ席を立つ。


便座前にしゃがみ込み、顔を中に突っ込む。

だけどえづくだけで、食べ物は出てこなかった。


今日は食べられると思ったのに……。


彼が別人のように見えた。

彼は私とは違って、心にしっかり血の通った人間なんだと。

ずっと同じ人種だと思っていたのに、お前とは違うんだよといきなり突き放された気分だった。


「うぅ……っ」


彼は私に優しい言葉をかけてくれるけれど、その瞳には色がない。
それが心地よかったはずなのに。

ねぇ、一体どんな目で彼女を見るの?

どんな顔をするの?

どんな話をするの?


私のことを見ないあなたが心地よかったのに……。
他に見ていた女の子がいたことを知って嫉妬にかられている。


そうさっき芽生えた感情はこれだ。
その女の子に嫉妬してるんだ。


……あぁ、こんな気持ちは初めて。

彼に恋でもしているのだろうか。

でも、彼に恋をすれば私の心にも少しは血が通えるだろうか……。


あなたは知ったこっちゃないだろうけど。

私は、あなたのことを勝手に仲間だと思っていた。

誰も好きになれない冷たい人だと。


それなのに、いきなり一人にしないで。