……昼間、彼と親しくしている藤沢という女医から聞いた。


『宗佑、今ちょっと落ち込んでるからさ。励ましてあげて』

『何かあったんですか?』

『ずっと片思いしていた幼馴染が結婚するって知ってから元気なくなちゃってさ』


……それを聞いた時、ショックだった。

彼が誰かにずっと片思いしているような人間には思えなかったから。

そんな情の厚い男だとは思わなかった。

もっと稀薄な人間関係の中で生きていると思った。

それなのに、一人の女にひたすら片思いなんて……。

そんなこと、無縁な人間だと思っていたのに。


私と同類の人間だと思っていたのに。



私は昔から人形みたいと言われることが多かった。

冷たい目をして、冷たい心をしてるって、そういつだったか言われた言葉。


感情を表に出さないだけでひどい言われようだと思った。

だけど、言われた通り私の心はどこか冷たく血が通っていないよう。


だって、そうでもしないとこの辛い世界を生きてはいけないじゃない。

私は人より少し、いや、だいぶ敏感だから。

人のふとした表情から全て感じ取ってしまう。

言葉の節々の嫌味も全て分かってしまう。


そればっかりに私は不幸な人生を歩んできた。

もちろん、友達なんてできなかった。

疑心暗鬼にかられて、人とまともな人間関係を築いていけなかった。


鈍感力、そんな本が流行った時代もあった。

私はその本を知った時思った。この能力が欲しいと。


それだけで、きっと今よりずっとましな人生を送れていたのに、と。


こんな不幸な人生の中で、私は心を閉ざすことに努めた。

心の目、耳、口を塞いで。

もう誰の卑しい感情も感じたくなかった。

私は、永遠に一人で生きていこうと思っていた。