そんな中心から踏み出たそうちゃん。
少し周りを見渡して、私と目が合った。
私に向かって手を挙げ微笑むと、女の集団の中にいる私に近寄ってきた。
そんな何でもない仕草一つでさえ、かっこいいなんて……。
そう、見惚れていたのも束の間。
周囲の不穏な空気に気付き、冷や汗が垂れる。
あぁ、だめだ、今ここに来たら大変なことになる……っ。
「未結、久しぶり」
「ひ、久しぶり」
「良かった、前会った時より元気そうだな」
前会った時……?
彼女達の顔に陰りが差す。
あぁ、殺気が。
痛い程の殺気がこの辺り一帯に満ちている……っ。
年を重ねて、小中学時代のモテっぷりが少し緩和されたとでも思ってるらしい。
彼女達の熱い視線には全く気付いていない。
全然ですよ、医者っていうスペックが加わってむしろヒートアップしちゃってますよ。
何か変なことを言い出さないうちに、そうちゃんの体を男達の方へ向けさせる。
「ほ、ほら、もうあっちの方に戻ったら?」
「なんで?」
「だって皆と会うの久しぶりでしょ」
半ば強引な私に何か感じ取ってくれたのか、不審そうにしながらも引き返してくれた。
「分かった、じゃまたな」
彼に手を振りながら、彼女達の顔を見るのが怖い。
さぁ、そうちゃんが去って始まるのは質問責めだ……。
「……何、今の会話」
「前っていつ会ったのよ」
「やだなー、近所だからそりゃ会うよ、いたって普通な幼馴染の会話でしょ?もう変な勘違いしないでよねー、あはははは」
笑って誤魔化しているところに、後ろからあのお祭り男の賑やかな声がふと耳に入る。
「この前こいつ西川と車ん中でいちゃついててさー……」
……殺っ。
禍々しい妖気が私を包む。
あぁ、今すぐにでもあのふざけた男を黙らせたい。
もちろん、あいつの声は私だけではなく、皆の耳にもしっかり届いていた。
奴のせいで燻っていた疑心という火種に油が注がれてしまったのだ。


