「おいで、1人で寝るのが怖くて来たんだろう?」
そう言って前のように一緒にベッドの中に入る。
二度目だけれど、胸が張り裂けそうな緊張感は拭えない。
だけどしばらくすると、だんだんこの腕の中が不思議と心地よくなってくるのだ。
……暗い闇の中で、自分の体を誰かの手が這っていた。
振り払いたいのに体が全然動かない。
大丈夫、大丈夫、私には先生がいる。
念じた瞬間、ふっと体が解放されるかのように軽くなった。
ふと目を開けると、ピンク色のぬいぐるみのウサギが私を見つめていた。
そして囁いた。
その人は、宗佑君の変わり?
男の人なら誰でもいいんだね。
卑しいね、だから安生先生なんかに目を付けられるんだよ。
またボロボロになって傷ついたらいいよ。
そしたらまた誰かに助けを求めるんだろうね。
だって、強がっていても1人じゃなーんにもできないんだもんね。
仕事と自分の体どっちが大事かって簡単な決断もできず、グズグズ泣くことしかできないんだもんね。
そうやってずっと一歩も前に進めず、そこで嘆いていたらいいよ。
どうせ、君はずっと1人だ。
先生、そう言って頼みの綱を懸命に手繰り寄せようと呼ぶのに、返事はない。
暗闇の中の手が私の首を絞める、絞めている人間は私自身だった。
ぱっと目を開けると、玉のような汗をかいていた。
……そうか夢だったんだ。
先生の腕の中、以前のような安堵感はない。
息が苦しくて逃げるように、静かにそこから這い出た。
「は……っ」
発作のように息が苦しい。
薬。
薬を飲めばすぐに楽になる。
でも、そんなドロ沼から抜け出したくて先生の家に来たのに。


