「じゃ、もう私とは会えないの?」
彼女が涙声混じりにそう聞く。
「まぁ、そうなるな」
「なんで……っ」
「なんでってこっちがなんでだよ。お前とは付き合うつもりないって言ってあっただろう?それでもいいから関係を続けたいって言ってきたのはお前の方だろうが」
「そうだけど、やっぱり好きなんだもん……っ」
そして彼女の目から涙が零れた。
自分もつい先日失恋を経験しているだけに、彼女の言葉には胸が詰まった。
しかし、隣から盛大なため息。
「俺に本気になるようだったら、もう会えないよ。ちなみに、この子のこと彼女って言ったけど嘘だよ。ただの知り合い」
「な……っ」
「試すようなことして悪かった」
しばらく続いた沈黙の後、彼女はソファから立ち上がり、振り返ることもなく部屋から出て行った。
「なんで関係ない君が傷ついたみたいな顔してるの?」
唐突にそう聞かれ、思わず聞き返してしまう。
「え?」
「ひどいと思った?」
単刀直入に聞かれ、私は少し悩んだ後ゆっくり頷いた。
「せ、先生は付き合うつもりもないのに彼女と関係を持ってたんですか?」
「彼女がそれでもいいって言うからね」
「でも、泣いてましたよ……?」
「泣いてたね、なんで俺なんか好きになるんだろうな」
まるで他人事のように言う先生に、胸が苦しくなる。
彼を情に厚い人間だとは言わない。
だけど先生に抱かれて眠りについたあの日、確かにそこに温もりを感じたのだ。
「す、少しでも、可哀想だとは思いませんでした?」
「好きな気持ちを利用してさ、関係を続ける方が可哀想でしょ?今みたいにきっぱり断ってあげた方がまだ傷も浅くて済むと思うけど」
「傷の大きさなんて本人しか分かりませんよ。せめて慰めの言葉一つでもかけてあげたら……っ」
「自分も最近振られた立場だからってそんなにムキになってるの?」


