もしかして、忘れたんじゃなくて、忘れようとしてるのかな?

私は、何を忘れたい?


わからない。


「どうしたの?」

男の人は、いつの間にか私のそばに来ていた。

「つらいことでもあった?」

どうやら、私は、泣いていたらしい。大きな雫が目からポロポロと流れている。

「ううん……違う……違うの。大丈夫。大丈夫です。私、つらいことなんて何一つありませんから、大丈夫ですよー」

私は、涙を止めて笑顔で言った。

「……そっか。でも……何もないなら、涙は出ないだろ?何かあったんじゃないか?」

男の人は、心配そうに言った。