普段、通らない道を歩くことなんてほとんどない。

おそらく、その日に私は、大切な用があったに違いない。

その記憶が思い出せない……。

事故現場である横断歩道で私は、立ち止まる。

私は、ここで記憶を無くしたのか……。
そのせいで、私は、何処にも戻れないのか。

風が吹く。

その風を受けて桜の花が舞う。

「綺麗……」

事故に遭った場所でこんなこと言うのもどうかと思うけど 、心からそう思ったのだ。