言おうとしたら、先にクスっと笑いながらお母さんに答えられてしまった。
「なんで分かるの?まだ言ってないのに」
「分かるわよ。ひかるがこんなに興奮しながら楽しそうに話す時はいつも一ノ瀬先輩のことじゃない」
お母さんには言わなくても分かっちゃうんだ。
大したことじゃないのにそれさえも嬉しくなってしまう。
「それで、今日は一ノ瀬先輩とお話できたの?」
「うん!先週よりもリフティングが続くようになったな、立花は努力家だなって言ってもらえたよ!」
「良かったじゃない!このままその一ノ瀬先輩と距離が縮められるといいわね!」
『うんっ!』と大きく頷いて答えようとした時、バタンッと大きな音を立ててリビングのドアが閉まる音がした。
そしてあたしはお母さんとリビングのドアを見て、相ケ瀬くんがいないことに気付いた。

