「……無理。今気分悪いからどっか行って」
バルコニーの柵に腕を載せたまま、こっちを見ずに相ケ瀬くんはそう言った。
いつものあたしだったらきっと、『何でよ!いいじゃん貸してくれたって!』って強気に言ってたかもしれないけど
今日はなんだかそんな風に言えるような雰囲気じゃなかった。
確かに最近は日も長くて明るいけど、電気は付いてないし
相ケ瀬くん自体もいつもと違った空気がした。
「……分かった」
ぽつんとそれだけ呟くと、あたしはドアを音立てないように気を付けながらゆっくり閉めた。
リフティング練習早速頑張ろうかなって思っただけなのに!と心の中で文句を言いながら自分の部屋に入った。

