鍵をバッグから取り出して、そのまま更衣室に着替えに行っちゃおうと思って制服も一緒に持つと、急いでまたグラウンドに戻った。
「お待たせ!はいっ」
あたしは入学祝いにお父さんに買ってもらったキーケースごと相ケ瀬くんに渡した。
「サンキュ」
彼は受け取ってそれだけ言うと部室に駆けて行く。
初めて……相ケ瀬くんの口からカチン!と来る言葉以外を聞いた。
あたしはその走っている姿を部室に入るまで見つめてから、更衣室に足を向けた。
なんでこんな近くにいるのにあたしは部員達よりも仲良くなれないんだろう。
空に少しずつ顏を出し始めた星を見ながら、出る訳もない答えを探して。

