あたしは仕方なく、前に2、3歩相ケ瀬くんの方に近づいた。
だけど彼からは、「は?」という言葉と怪訝そうな顔が返ってきた。
これでもだめ?あたしは少し大股で一歩前に進んだ。
「もっと」
もう十分近いと思うのに。本当は分かってる。相ケ瀬くんは常識ある人だから外では何にもしないことくらい。
あたしが相ケ瀬くんの真横に足を踏み出した瞬間、左手を掴まれてぎゅっと握られた。
「遅い」
「だって!今回は悪いのあたしだけじゃないと思う」
「じゃあ誰が悪いの?」
「相ケ瀬くん!」
分かってるくせに。なんでこんな当たり前のこと聞くんだ。全然訳が分からない。
でも隣にいる彼はあたしの手を引きながら「知ってる」と返してきた。
なんか完璧からかわれてるだけな気がしてきた。

