「翡翠は面白い光景を見せてくれるわね、山南さん」


土方はほくそえむ。


「ええ、彼は賢い闘い方をしますね」


「一(いち)どう思う?」


「正中線を生かし、尚且つ基本に忠実で繰り出される胴……あの打突では、どこへ打ち込んでくるか予測がつくまい」


「真刀を相手に竹刀で、あの冷静さ――あれほどの剣士とは」


「割って入らなくて正解だったようね」


土方の肩をポンと叩き、凛々しい声が響く。


「近藤さんも観てたのね」


「総さんは、面白い剣士を拾ってきましたね」


「あの剣気、とても女性に怯え震える姿を想像できない」



「やはり翡翠には……提案を実行させるべきね。強制的に」



「歳さん!? 何を考えて?」


「一(いち)、部屋へ来るよう翡翠に伝えて」



土方の顔が光をさしたように明るくなる。
悪戯を思い付いた子供のようだ。