新撰組異聞―鼻血ラプソディ

――試合ではなく、死合いをしなさい


沖田の頭に土方の言葉が甦る。


――昨日。
裏庭で稽古をつけた時よりも、今の山南さんとの動きの方が良いなんて……。

あの子、翡翠くんは進化している!?

勝つ……いや、1本取れるの?


沖田の胸に不安が押し寄せる。



沖田は昨日、自分自身が拾ってきた少年の力を計りかねている。


沖田は普段。
1度、対峙すれば大抵の者の実力を見極めることができる。

けれど未だに、翡翠の力を読めていないことに、得体の知れない恐れが込み上げる。



「山南さん……ギャラリー、エキサイトさせるために図らはった?」


聞こえてくる隊士たちの会話に翡翠は、山南に訊ねる。


「!? ギャラリー……エキサイト!?」


「あ……隊士の人達の気をこちらへ向けるために」


「なんのことでしょう」


山南は澄ました顔で、隊士たちの方へ歩いていく。