新撰組異聞―鼻血ラプソディ

「……面が当たる瞬間、あいつは交わしながら体を捻り、中段から胴に当てにいった……!?」


斎藤一子(いちこ)が自信無さげに言う。


「一(いち)、あれは……当てにいったのではない……胴に、竹刀を置いたんだ」


沖田がポツリ呟く。


「総!? 目隠ししてて、そんなことができるの?」


「平(たい)ちゃん……あれは、新陰流の剣士」


沖田は静かに、藤堂平子(たいこ)の問いにこたえる。



「や、柳生宗厳の?」


「――かなりできるわね。総と一(いち)くらいにしか見えない速さで……」


「さっきまで、総の部屋で怯えていた子が」


「鼻血出して、震えてた子なのよね!?」


隊士たちがざわめく。



――あの山南さんが……目隠ししている翡翠くんに敵わないなんて……。
目隠ししていて、あの一瞬で、あの速さで動けるなんて……


沖田は言い知れない不安にかられる。