新撰組異聞―鼻血ラプソディ

何も言わずに仕掛けられたなら、面を交わせなかった。


目隠しをしていることへのハンディキャップに、温情を掛けたことが、負ける因を作った。



翡翠は顔を歪めて、山南のいる方を見る。


「言いたいことは大概わかりますよ。
でも、それでも私では……楽しめました」


山南はフッと笑う。


つかめない人だなと翡翠は思い、辺りが静かなのに気付く。


「しくじりましたね」


山南が穏やかに呟く。



――この人は……計算していたんだ


山南の面を交わす瞬間、竹刀が山南に当たる瞬間を隊士たちが、見ていたことに、翡翠は気付く。



「今のは?」


「あの坊や、何をしたの?」


「見えなかたわ」


「総ちゃん、見えた?」


「――ツっ」


沖田が翡翠を見つめ、木刀を強く握りしめる。