新撰組異聞―鼻血ラプソディ

「酷い顔ですよ。少し冷たいけれど、我慢して」


穏やかな声の主が翡翠の顔を拭く。


「歳さんから話を聞いています」


翡翠が身を固くする。


「……誰?」



「山南敬です」


山南敬……と聞いて翡翠の頭に小説のシーンが浮かび、翡翠はポツリ呟く。



「……白椿」



「ん?……白椿は好きな花です。よし、綺麗になりましたよ」


「す、すみません。……あ、ありがとうございます」


「深呼吸して。1本取ることも大事かもしれませんけど、君には楽しむ余裕が1番大事ですよ」


穏やかに笑う。


「体に力が入っていては、良い動きはできませんよ。
力を抜いて、胸を借りるつもりくらいで丁度いい」



「……攻めではないということですか?」



「どうでしょう? 牽制、返し、攻め……総さんは策士ですから、読み解いてみるのも面白いですよ」