新撰組異聞―鼻血ラプソディ

翡翠は、どうでもいいような雑音の中に、幾つか整った一定のリズムがあるのに気付く。


構え、振りかぶる、打つ、小手、突き、合い面、胴……。



翡翠は部活で部員達の動きを見たり、手合わせをしたり、稽古のプログラムを作ったりする。


だが目隠しをし、黙って音だけに集中するなんて、滅多にない。


昨日。
目隠しをされ、音だけの世界を経験したのも初めてだ。


灯りのない中で、何も見えない中で聞くリズムは、どれも体が覚えていても、何気なく聞いているリズムのはずだ――と思う。


なのに、個々のリズムはそれぞれ違う。


昨日の稽古で、感じた沖田の風のようなリズムと今、沖田と手合わせしている隊士のリズム―――。



翡翠は音を聞きながら、沖田から1本を取る秘策を考えている。



「君、……君……信太さん」


翡翠の肩を叩き、誰かが翡翠を呼ぶ。