新撰組異聞―鼻血ラプソディ

稽古場へ着くと沖田は、翡翠を安全な場所に座らせる。


「ここで見てるのよ」


翡翠はコクり頷き膝を抱える。

拗ねた子供が体を丸め、座っているようだ。

沖田は思う。


沖田が入って来たのを確認すると、数名の隊士が沖田を取り囲む。


「あの子、誰なの? 朝から騒がせてくれたわね」


「正直……引いたわよ」


「あの子は、まだ一時預り。それに……ちょっと訳ありだから、声をかけたり近づいたりしないように」


「そりゃーね~、朝からあんな状態見せられたら、うかつに近づけない」


「勿体ないわ」


「稽古、稽古」


翡翠の耳に、会話が聞こえてくる。


俺は異常なんだと、翡翠は改めて思う。


稽古が始まると、一気に様々な音が入り雑じる。


竹刀と竹刀がぶつかり合う音、数十人もの隊士が鳴らす音に集中する。


沖田の声が、一際響く。