新撰組異聞―鼻血ラプソディ

フラフラじゃないの、沖田は思う。


土方は翡翠の荷物を置いた部屋の隅、壁に立て掛けた竹刀を翡翠の手に握らせる。


胴着と袴姿の翡翠。
土方は沖田から昨晩、翡翠が着替えずに寝てしまったと聞いている。



沖田は髪を束ね、1つに結び急いで着替える。


「翡翠」


顔は血まみれ、竹刀を支えにして、立っているのもやっとのような翡翠を、土方は見つめる。


「深呼吸して、精神統一しなさい。
稽古を終えたら試合をさせる。
翡翠、楽しみにしているから」


「はい」


土方が部屋を出ていく気配を感じて、翡翠が呟く。



「斬り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、踏み込み行かば後は極楽」



土方に言われた通り、深呼吸する。


「翡翠くん、いくわよ」



沖田が翡翠の手を引く。



――この子と死合いをする。

沖田の心は乱れている。