おまじないは、まだ解けないでいてくれている。


だけど俺は、いつ鼻血が出てもいいように、タオルを首にかけている。


ペットボトルのお茶の苦味とは違う、お茶の味。

口に広がる和かな苦味が心地よい。


「沖田さん……俺の住んでた世界には、星の形をした甘くて小さいお菓子があります……この世界にもあるかどうかわからへんけど」


「星の形?」



「はい………砂糖の味、口に入れたらスーっと解けるんです」



沖田さんが明るい声をあげる。


「あの……もし、俺が沖田さんから1本取って、此処に居られる資格がもらえたら……星の形をした『金平糖』探しに行きたいです……鼻血のお詫びに」



沖田さんは俺の言葉を黙って聞いている。


お饅頭を口にし、頷きながら。


1本なんてとらせないよという自信、涼しい顔で。



「沖田さん……稽古、つけてもらえしまへん?」