夕刻から降り始めた雨は、陽が落ちて尚、激しく降っている。


近藤は、宴席の始めに京都守護職会津藩主、松平容保より賜った書状を徐に取り出した。

1ヶ月前に出兵した政変の褒美に戴いたのだと、命名書を大事そうに広げた。


「壬生浪士組改め『新撰組』と命名する」


祝盃をあげる面々の顔には、様々な表情が浮かんでいる。


雨は更に激しさを増し、茶屋の窓を打つ。

雨音がひっきりなしに聞こえている。


「涙雨……」


ポツリ、土方は呟く。



稽古場で、翡翠に刀の扱いを伝授し、闇が白々と明けていくまで真刀で稽古をつけた。


新陰流の剣士、沖田から1本を奪った翡翠の、飲み込みの早さと勘の良さに、土方は驚きを通り越し感嘆を覚えた。


明け7つ(朝7時)には、稽古場に隊士が雪崩込み、汗を流した。