「わたしになびかない男なんて、今まで1人もいないのに……。
ちんたーーっ!! てめえ、玉あんのか!?」


「歳さん、『ちんた』ではなく『信太』ですよ」


「わかってるわよ。ちんた!! 顔洗って稽古場へ来い」


「……ち、ちんたじゃねぇ」


「聞こえない。そんな気合いの無さで、刀は扱えない」


土方さんの冷たい声が、頭の中でガンガン響く。


「神道無念流は甘くないわ」


声を落として、土方さんがポツリ呟く。


山南さんが引きつったような息を漏らす。


「どこから聞いて……」


「リスクのないチャンス辺りだったかしらね……翡翠、後戻りはできないわよ」



俺は声のする方に向かい、コクリ頷く。


「刀を持って、稽古場へ来なさい」


怯えて震える俺の手をガシッと掴み、土方さんは引きずるように立ち上がらせる。


山南さんが慌てて、俺に刀を握らせる。