新撰組異聞―鼻血ラプソディ

「仲間を処断する罪悪感でいっぱいいっぱいちゃう?」


俺は更に言う。


「計算づくで謀れんこともある思うで……それにリスクのないチャンスなんてないんや」



「君は……、リスク!?」



「あ……危険を伴わない好機なんてない。
壬生狼士組は、時代の流れに逆らっても血塗られた道を行くんやろ!?」


「血塗られた……」


山南さんは寂しそうな声を漏らす。


局中法度――士道に背くまじきこと、右に背きし者は……が頭をちらつく。


血に飢えた狼と言われた新撰組の歴史が、僅かながらではあるけれど頭を過る。


ハッピーエンドなんてない道、どう足掻いても新撰組が目指す未来なんてない。


徳川の時代は終わる。
幕府は滅び、武士の時代は崩壊する。
新しい時代に武士は要らない。
刀は必要ではなくなる。


そんなことを……言えるはずがない。