新撰組異聞―鼻血ラプソディ

――斬り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、踏み込み行かば後は極楽


土方さんの言葉が思い出される。


150年前の時代、幕末という時の重み。


冷静で心を乱すことなどないと思えた、軍師のような人が、俺を抱きしめている。


微かに伝わる震えと、抱き寄せられた温もり。


俺は山南さんをギュッと抱きしめる。


「俺も立ち合わせてもらいます」


山南さんの胸が、トクンと鳴ったような気がした。



「俺はあの人に暴言を吐いた。俺を睨んでた目が忘れられへん」


山南さんが、びくついたように俺を引き剥がす。


「俺が囮になって隙を作ります」


「何を言って……」


「芹沢の剣は昼間、交えて知ってます。
それに1度、負けた相手が目隠しで現れたら、油断するやろ!?」


「君は何を考えて……」