新撰組異聞―鼻血ラプソディ

「何故……聞いてしまったんですか」


「聞きたーて聞いたんやない。聞こえたんや……忘れられるもんなら、忘れたい……」


山南さんは何も言わない。

沈黙が続く。

どんな表情で押し黙っているのかを知りたい。

見えないことは、これほどまでに不安なのかと思い知らされる。


「私たちは前に進まねばならないんです。
ここで破滅するわけにはいかないんです」


山南さんが声を絞り出すように言う。


山南さんの気配が近づく。


「だからって……あっ……」


いきなり、強く抱き寄せられる。


俺の言葉を遮るように、柔らかい感触が俺を包む。


「……山南さん!?」


山南さんが俺をきつく抱きしめている。


葬り去らねばならない者への悲哀を感じ、揺れる思いを圧し殺して……耐えている。


「誠を貫くためには、鬼にならなければならないんです」


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