我妻教育2

家に帰る気もしないけど、どこにも行く気もない。

悔しくて涙がにじむ。


カバンの中の携帯電話が振動した。


啓志郎くんからの電話だった。


『今日も来れるか?チヨがまた未礼に…』


「あ、ごめんね。…仕事忙しくって、行けそうにないや」

とっさに啓志郎くんの台詞を途中で遮って、嘘をついてしまった。


『…そうか、それならば仕方がないな。仕事頑張ってくれ』


残念そうな啓志郎くんの声を聞いて罪悪感はしたけど、行くのは無理だと思った。

「うん、ありがとう。チヨさんにもよろしくね」

『ああ。じゃあ、また』